
第42回京都病院学会
2007年07月25日
演題1
点滴自己抜去への取り組み
~ストッキングを用いての一考察~
Ⅰ.始めに
急性期の患者は呼吸管理や循環動態維持のために多数の点滴ルートやチューブ類を挿入され、身体的に制限された状態にある。緊張や不安が極度になると不穏やせん妄等の精神症状を生じやすくなり、結果的にルートやチューブ類を患者自身が抜去するようになる。
当院の一般病棟において、急性期治療を必要とする認知症患者の点滴自己抜去は起こっており、防止策として包帯固定による方法を実施していたが、自己抜去は繰り返される状況にあった。
そこで今回、包帯固定以外に自己抜去の予防は出来ないかと思い、ストッキングを利用しての方法を検討した。その結果、自己抜去の予防が出来、認知症患者の看護に対して振り返るよう機会となったのでここに報告する。
Ⅱ.研究方法
1.研究期間 H18年6月20日~9月1日
2.研究対象
1群:認知症を有する点滴治療が必要な患者16名
2群:医療従事者19名
3.方法
①1群の点滴治療が必要な患者に対してストッキング固定の実施
②2群の医療従事者に包帯及びストッキング固定を実施し、感想等を記述式で調査
Ⅲ.結果及び感想
1群:包帯固定での自己抜去歴のある患者を含めた16名は、ストッキング固定では自己抜去せず、治療を無事終了出来た。点滴ルートを触ったり、ストッキングをずらしたりの行為は見られたが、抜去には至らなかった。
2群:包帯固定の体験において、自分達がこれまで考えていた以上に圧迫感やムレ、痒み等の不快感が強いと感じた。ストッキング固定においては、不快感は殆んどなかったが、ストッキングの「端の丸まりやズレ」の指摘、「足に履くもの」と言う抵抗感や外観を指摘する意見もあった。
Ⅳ.考察
ストッキング固定を実施してからは、点滴の自己抜去は見られなかった。これまで私達は固定用テープを剥し点滴ルートを自己抜去するのは、自分の身体に付いている付属物を取り除こうとしているものと考え、それが目や手で触れないようにと包帯で固定し隠す対応をしてきた。しかし、今回の対象者の中にはストッキング固定中、点滴刺入部周辺に手を置いたり、ルートを触ることはあったが抜去には至らなかった。浅見は認知症患者の輸液ルート管理について「不快を感じても言葉でなく、点滴ルートを引き抜くことで表現してしまったと考えられる」と述べている。また、包帯固定は2群の結果からも不快感が強いことを考えると、患者は点滴留置による不快感よりも、包帯固定による不快感を取り除くために抜去に至ったと考えられる。その為、ストッキング固定では通気性が良く、圧迫感による不快を感じずに過ごせたと考えられる。しかし、ストッキングにおいては、「足に履くもの」をいう抵抗感や見栄えの指摘もあり、今後の改善点と考える。また、ストッキングの「端の丸まり、ズレ」に対しては、その後サイズや縫製の工夫により改善が図れた。
また、今回の認知症患者のルート管理を通して、これまで私達は点滴が自己抜去された時、まず最初に包帯固定を含めた「抑制すること」を考えたが、「何故だろう」と患者の思いを考えていなかったことに気付くことができた。看護師は業務をこなすことに精一杯で、余裕がなく患者の立場に立ち考えることが困難になっていたと考える。拘束・抑制により認知症の症状の進行やせん妄の頻発を招き、拘束が拘束を生む悪循環を私達自身が作り出していたと考える。患者が点滴を不快と感じないよう内容や量、点滴を行う時間等を再検討すると共に、患者の立場に立つことの大切さを改めて学んだ。
Ⅴ.終わりに
今回の研究で、ストッキング固定により点滴自己抜去の防止が出来た。また、認知症患者に対しては、患者の行動だけに目を捉われず、その背景にある行動の理由や気持ちに目を向けることが大切である。
今後も、患者の立場に立つことを忘れずに看護に取り組みたい。
演題2
禁煙外来開設 ~その取り組みと結果~
Ⅰ はじめに
平成18年4月禁煙治療の保険適用が開始されると同時に当院でも禁煙外来を開設。開設当初は、標準手順書を片手に手探り状態であったが、手順書に添付されている帳票を見直すとともに、伝えたい情報を成文化して利用することで禁煙外来の基礎ができた。進めていく中で問題点も明らかになり、その解決のためにサポートチームが結成された。開設から1年が経過した現在、まだまだ試行錯誤の部分もあるがこれまでの取り組みとその結果、及び症例を報告する。
Ⅱ 禁煙外来開設・運営の問題点と対策
1.問題点
①「禁煙治療のための標準手順書」に添付されている帳票だけでは収集が不十分である
②医師と専任看護師だけでは患者ニーズに十分対応しきれない。
2.対策
①帳票の見直しと資料の追加作成
②医師と看護師に加え、薬剤師・医事課・健康管理課より専任担当を選出しサポートチームを結成
Ⅲ 結果および考察
①初診問診票を見直し、禁煙経験の詳細、喫煙欲求の状況、禁煙環境、健康状態等の内容を追加することにより、禁煙治療に必要な情報を得るための質問が盛り込まれ、禁煙指導する際のポイントが明確になった。また、問診票は初診再診ともに、記入しやすいチエック式を主に取り入れ、再診問診票においては、言葉では伝わりにくい喫煙欲求度を1~10の数字で表現してもらうことにより、経過を確認しやすくなった。医師の診察に向けて、その情報を簡潔に報告することと数種の情報掲載用紙を利用することにより、医師は患者個々の問題に焦点を当てた診察が可能になった。
②禁煙開始間もない患者には、ニコチンパッチの副作用、ニコチン離脱症状の聞き取りとその対処法についての情報提供、励ましを主な目的として電話連絡を行っている。当初は看護師が行っていたが、薬剤の専門知識を持ち夜間診療勤務もする薬剤師がこの業務を行うことで、看護師の負担は軽減されるとともに患者サービスの時間が拡大された。
当院におけるニコチンパッチの主な副作用の発症率は、睡眠障害15%、かぶれ等の皮膚障害が52%であった。
Ⅳ 症例
倫理的配慮:本人に口頭にて説明し、承諾を得た。
A氏 34歳 主婦
喫煙本数20~30本/日 喫煙年数17年 TDS10点 呼気一酸化炭素濃度84ppm(喫煙後1時間)
禁煙の動機;タバコを吸っていることがしんどいのに自分では止めることができない。チェーンスモーカーで家事をする時間が少ない。
初診時:診察中自身の状況を話しながら涙を流している。
治療方針;ニコチンパッチの標準的使用とニコレットの補助的使用によるニコチン代替療法
経過;8月初旬禁煙開始。2日後、電話で状況を伺うと、禁煙のつらさと睡眠障害の訴えがあり、ニコチンパッチ使用時間の指導と今が一番つらい時期であることを伝えて励ました。
再診1回目:喫煙欲求レベルは7で睡眠障害は解消されていた。禁煙を始めてから「朝ゆっくり寝ていられるようになった」と話す。花火大会で飲酒し10本、2週間で合計18本喫煙していた。喫煙しないためにニコレット併用の継続と健康意識をもつことの重要性を話した。
再診2回目:喫煙欲求レベルは2で禁煙は継続されていた。患者より「朝の生活の流れを変えた。また吸いたくなるような不安を感じたらニコレットを使用している」と報告あり。ニコレット依存の傾向があることを自覚してもらい、使用中止の方向性を伝えるとともにリラックス法について情報用紙を渡し助言した。
再診3回目:喫煙欲求レベル1。ニコレットを1/2ずつ数回使用しており、ニコチンパッチを使用しないで禁煙を継続させる自信がないと訴える。ニコレット使用中止を指導し、ニコチンパッチの追加処方とその流出量の調整指導をした。
再診4回目:喫煙欲求レベル0~1。子どもたちも「もう大丈夫」と言ってくれていると話し、笑顔の卒煙となる。
3ヵ月後、禁煙は継続されていた。禁煙治療を振り返り「もう二度とつらい思いはいや。禁煙して1日が長くなった。人生が長くなっていっぱいいろんなことができる」と話す。
Ⅴ おわりに
平成18年度の禁煙成功率は65.9%(治療中断者の成功者を含む)であった。これまでのデータと経験をもとに今年度はクリニカルパスを導入し、外来看護師全体の禁煙治療に対する知識を向上させるとともに、患者の不安やイレギュラー時の対応ができるようにしたいと考える。また、これまでに卒煙された患者のコメント紹介などにも取り組んでいこうと思う。